べんべろしゃとん。


宮沢賢治の『おきなぐさ』という童話の中に

こんな一節があります。

それはたとえば私どもの方で、ねこやなぎの花芽はなめをべんべろといますが、そのべんべろがなんのことかわかったようなわからないような気がするのとまったくおなじです。

とにかくべんべろということばのひびきの中に、あのやなぎ花芽はなめぎんびろうどのこころもち、なめらかな春のはじめの光のぐあいがじつにはっきり出ているように、

『おきなぐさ』宮沢賢治
青空文庫より。


カギ爪のような殻をやぶり、ふあっと出てくる

無垢なこねこのような、ほわほわの芽。

フランスでも、ねこやなぎをchaton(こねこ)といいます。

正式にはchaton de sauleというようですが、皆、chatonとよびます。




そういえば

「びろうど」というのは、なまえとそのものがすごく一致しているな、



先日、手芸店のビロード素材のりぼんを見て、おもいました。

なまえを呼ぶことで初めて、

混沌から、ものの輪郭がうまれます。

その輪郭にぴったり沿うようななまえ(というか、姿)を見いだしてあげられたら

とても幸せだとおもいます。

ものごとや、人や花と触れるとき、

上手に慎重に、なまえをつけてあげられたらいいなとおもいます。


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