現在想う、一期一会。



■5月17日〜21日、春のオープンアトリエを開催いたします
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先月立ち寄ったwad cafeさんで

airiちゃんと、お茶会に参加してきました。

やや長くなってしまうのですが、

とても興味深い内容でしたので、よろしければ読んでみてください。


“現在想ふ、一期一会”と題されたこのお茶会は、

茶会でつかった椀を最後に自らの手で割るという

とても実験的なものでした。


そもそもは、

オーナーの小林剛人さんが

“日本のペットボトルやコンビニのプラスチックのうつわって、

使い捨てなのに、美しいかたちをしている。

どうしてこんなにこだわってつくられているんだろう”

という疑問をもっていたことから生まれたそうです。

sustainableの重要性が叫ばれる時代で、

うつわ、とくに茶碗は修理して使い続けるべきものという私たちの観念があります。

ちなみに小林さんは日頃うつわを修理(継ぎ)する立場にあるので、なおさらなのだとか。

でも、だからこそ、“使い捨て”のもつ美しさに、深い興味をもったのだそうです。



国は変わって

インドのチャイを飲む野焼きの陶器も、使い捨てで

皆割り捨てるそう。

陶器を割るというと、私たち日本人には抵抗がありますが

彼らにとっては私たちがペットボトルを飲み終わった後捨てるのと同じ感覚。

日本で茶碗というと、完成するまでの手数も多く

茶室にあるものの中でも最も丁重に扱われるほどのものですが

チャイの陶器は、“おっちゃんが適当に1分間に5つぐらいつくってる”ようなものなんだそう。

でも、手数が少ないからこそ土そのままの表情が出ていて美しいのですって。


そして、日本では、茶の文化のもともとを辿ってゆくと

千利休が秀吉の戦に同行し、

士気のさがった兵士たちのために戦場にて茶会を設けたという歴史があるのだそうです。

竹を切り出し、削って花入れをつくったといいます。

そこには野の花が活けられたことでしょう。

それは即席で、“使い捨て”のものかもしれませんが

それこそが最上のもてなしとされました。

今日はじめて顔を合わせた相手。

明日また生きて会えるか分からない。

文字通り、一生に一度と書く“一期一会”。

命と命で向き合い、悔いの残らぬよう、主はその一席に想いを尽くして客をもてなす。

そのあとに、物は残らないけれど、それほどに、すべてを尽くして。

そうして侍たちは、士気を高めて戦に出たのだといいます。


戦時中に特攻隊が菊の紋のはいった杯で酒を飲み、

それを割ってから旅立っていったという習わしや

兄弟の杯を誓ったあとに杯を割る、など

日本において、うつわを割るという行為(=使い捨てることであり、破壊)には、

次のステージへいく、という意味合いも込められてきたのではないかと。


神社は白木でつくられていることや

式年遷宮(20年ごとに社殿をすべて壊し、新しくする)のしきたりなどにもみられるように

神道において、破壊とは清浄し、新たなる創造につながるもの。

日本人のルーツにつらなるものなのではないか。


お茶会の前に、そんなお話を伺いました。



空間デザイナーの田中陽子さんにより生まれた、茶室空間にて。

樹脂でつくられたという天蓋は、

利休が、戦場の野で、即席でつくった茶室を想像させるようで

茶碗をひっくり返したような

そして、ひとたび中にはいれば守られるような、蚕のようなかたち。


お茶の作法を心得ていない私たちは

どきどきしていましたが

作法はなにも要らない、という言葉に甘えて



ただその場をたのしみ、集中することができました。


茶碗には、高台がつけられていません。

よって、お茶がはいった状態で床に置くことが出来ないので、白砂のうえに。

置いたりしまったりするための茶碗ではなく、

本当にそのとき茶をいただくためだけのうつわという意味なのだそうです。

割ることが運命づけられた茶碗とはいえ、

自ら選び、手の中におさめてお茶をいただき、

眺めて愛でたお茶碗。

それを割る瞬間は、しんどかった。

そのしんどさが、本来の一期一会の重みにつながっているようで。

手を離したら

落ちた瞬間、割れた。

自分の意志で手を離す感覚は、

無意識に離れてしまう時の感覚とはまるで違って、

ざらざらと苦い感覚がする。


目の前で割れた音と衝撃も、全部自分の触感のように感じました。

後に戻らず、新しいステージへいく。

一期一会は、すごく、しんどい。

しかし、それはもう二度とないと未来を断つことではなく

また、すごした過去を失うことでもなく

ひとときに感じたすべてを昇華すること。


そんなことをおもいました。

おもしろいことを考えるひとが、いるものです。

割った茶碗の破片は、記憶として、持ち帰らせていただけました。

今はおうちで、アクセサリーを置いています。


その翌日はチーフのmayumiさんの結婚式(また後日♡)だったこともあって

この一生にうまれる縁、人と人との結びつきなどにも想いを馳せて。




じつはこの日、予定時間よりもすこし早く到着してしまったので、

当日お茶会でつかう野焼きの茶碗をつくられた

作家の明主航(みょうしゅ わたる)さんの個展を見せていただきました。


うつわを横切る線は、最後に指などでヒュッと形づくるときにつく線で、

自分を刻んでいるという想いがあるそう。



京都や大阪を中心に個展をひらかれている作家さんで

1990年生まれ、弱冠26歳というお若さですが、

wadの店主・小林さんが初めてみたとき

「これはやばい!」と衝撃を受けたのだとか。

つくってこられたものの変遷を少し見せていただきましたが、

そのときどき、変化していくけれどもすべてに通じる芯となる個性があって

素人目にも、おもしろくて、自然の静けさや命の強さを感じるうつわをつくる方。

ご本人はほんわかしていて、実年齢よりさらにお若く見える方でしたが。

東京では今のところ、扱っていないようなのですが

今後ますます、ご活躍されるのではないかと楽しみです。


茶室空間でみたうつわたちが余りに美しく

お茶会の後、ギャラリーにもどって

お湯のみと角皿を買い求めてきました。


5月のオープンアトリエでお出ししようかな。


さてさて。

明日からは、パリへ一ヶ月いってまいります。

ばたばたしていて今になって荷造りをしています。

あちらは東京よりも暖かいようです。

パリからもまた、ブログを更新しますのでお付き合いくださいませ。


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