夢十夜と、カミムラ先生。



“夏目漱石の『夢十夜』を思い出しました。”

かえってきた作文には、カミムラ先生からこんなコメントが添えられていました。


高校3年生のころ、選択科目で『国語表現』という授業をとっていました。

本来、エスカレーターで進学するのではなくそとの大学を受験する生徒たちは

数三とか公民とか世界史だとかを習っている時間だったかもしれない。

思えば当時からやりたいことしかやりたくない性分だったので、

受験するくせに、受験に必要な科目ではなくて

図書と国語表現をとっていたのでした。

ああ恐ろし。なんとかなってよかったな。

その国語表現では毎回決められたテーマに沿って

1時間、原稿用紙に向かってひたすら文章を書くのが授業でした。


その回ではどんなテーマで、自分がどんな作文を書いたのか

ほとんど、薄ぼんやりとしか覚えていません。

先生からのコメントも、その一文に続いてもっと云々書いてあったようにおもいます。

ただ、多感なお年頃だった当時の少女Y(というか私)は

咄嗟に、

読んだことのないその『夢十夜』を真似っこしたと思われたのではないかとおもったのです。

動揺して顔が真っ赤になったのだけ、鮮烈におぼえていました。


算数と理科を小学生の時点で諦めたかわりに

作文は毎回A+をいただいていて、得意でした。

その作文もA+だったのだけど、

だからこそ、急にカンニングの容疑をかけられたかのように

どぎまぎとしてしまったのです。

以来、『夢十夜』は勿論、夏目漱石の作品自体も

なかなか手に取るのが憚られて

そうこうしているうちに、フランス文学専門になって、

その頃の記憶も遠のいてしまいました。


それが最近になって、

ふと書店で夏目漱石『文鳥・夢十夜』を目にした瞬間、

あの幼気な高校生の時分が舞い戻ってきたのです。

もう10年も経った今ですから、

どきどきもなんともせずに

そういえば、と思ってそのままレジへともってゆきました。


読み終えると、

というよりも

読み始めた瞬間に、

わたしは自分の誤解を知りました。

一にこんなにおそろしくうつくしい作品を自ら遠ざけたことを後悔し、

そして、甚だ次元のちがう高校生の作文を“真似たと思われたのでは”だなんて、

当時の痛々しい勘違いと世間知らずぶりが恥ずかしく

何よりカミムラ先生は、ものすごく、褒めてくださっていたのだと気づきました。

中高のカミムラ先生もテラウチ先生も、

予備校の大前先生も、

大学の永井敦子先生も、

文学をわたしに手渡してくれた先生たちは、本当に多くのことを教えてくれた。

わたしが授業中、もう少しだけでもちゃんと起きていれば

もっともっと世界がひらけただろうにと

学生時代の長きに渡る不真面目を反省もする。


なんだか嬉しくて、照れくさくて、

あまりに美しくて、

『夢十夜』の第一夜をなんども繰り返し読んでいます。

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