湖面の瞳。


小学生のころ。

「水面」とかいて、「みなも」と読むのだと知ったときの感動を

ひどく鮮明に覚えている。

たしか、河口湖か山中湖へいったときのことだったとおもう。

翌週の作文で、わざわざそれについて書いたほどだ。


おもえばそれが

わたしにとっての最初の記憶だ。

文学についての、

ひいては、

人の詩情についての。


スイメンではなく、みなもと呼ぶのは

世界に対する愛だとおもう。


きらきら光る湖の美しさをうつした瞳が

生み出したことばだとおもう。



そして今

20年の時が経って

わたしが伝えたいこと、たいせつにしたいことは

まさしく、そういうことだ。


暮らしに詩情を。


一匙の詩情があれば

人生はとても豊かになるとおもう。


いつだって湖を湛える瞳でありたいとおもう。