ジョゼと虎と魚たちと、くるりと。




という邦画が好きでした。


「でもま、それもまたよしや」

その一言に心臓を抉りとられるようなかんじがしました。


男女のせつなさやずるさ、弱さ、

海の底から光を見上げるような

希望とあきらめの入り交じった感覚。

それらの示唆を、高校生だったわたしは、ぐんと飲み干しました。


その映画の主題歌の歌詞やはっきりとしたメロディーは忘れてしまっていたけれど

その音楽のあった風景を

高速を走る車のフロントガラスの画はずっと覚えていました。


しばらく経って

くるりというグループを知って

ハイウェイという曲のイントロを聴いたとき、

あ、ジョゼの。

乾いた土に水が浸みていくように

その土が潤って盛り上がっていくように

ふと、抑えきれずにあふれてきました。




僕には旅に出る理由なんて何一つない

手を離してみようぜ

冷たい花がこぼれ落ちそうさ


くるり『ハイウェイ』より。