日々の景色。



今日は曇っていて、いつもの場所からスカイツリーが見えなかった。

帰宅路の途中、太鼓橋を渡りながら右に振り返ると

そこにスカイツリーが見える。

くるんくるん光の輪が回っているのを確認したら、また前を向き直して坂を上る。

いつのまにかそれが習慣になっている。

べつに見たからといってどうということはない。

ただの作業として、

毎日首だけひねって後方右を確認しているだけに近い。

珍しい色合いのライトアップの日には

お、

と一瞬足を止めることもある。

橋のてっぺんまでついたらもう一度、振り返ってみることもある。

それだけ。


でも、今日は見えなかった。


多少曇っていても、ほのかな光の動きぐらいは確認できるものなのだけれど

今日、首をひねって飛び込んできた視界はべったりとした灰色だった。

未練がましく、三度も四度も振り返ったあとで

落胆しているのかと気がついた。


日々、この目で見ているものが景色だ。

日々、感じるこの感情が自分だ。

それ以外にない。

そんなことも確認しないと忘れてしまう。

気づけばどこかに置き去りにしてしまう。

歩くことは単純で

でもたまに、とてつもなく厄介だ。